実務未経験の採用「ポテンシャル枠」を立上げて1年・教育とナレッジマネジメントでの変化

Date
March 25, 2022
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はじめに

こんにちは! 開発事業責任者の加茂です。

今回の記事では、1年前に執筆した 実務未経験のエンジニアを育てる「ポテンシャル枠 立上げ編」の振り返り版として、1年間運用してしくみ製作所がどのように変化したかご紹介したいと思います。

1年前の記事では、ポテンシャル枠によって「教育」や「ナレッジマネジメント」を推進したいという考えを書きました。

まずは「教育」がどのように変化したか振り返っていきましょう。

「教育」は1年間でどう変化したか

スタート当時は3名だったポテンシャル枠が、現在では卒業生を含め7名にまで増えました。

立ち上げ当初は

「本当にうまくいくの?」

「教育コストが見合わないのでは?」

「リスク高くない?」

といった不安の声もあり小さくスタートしたのですが、ポテンシャル枠として入社してくれたメンバーや彼らをサポートするチームの活躍によって、全社的にポテンシャル枠を採用のメインに位置づけるところまで浸透してきました。

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ただ、ポテンシャル枠を拡大するにつれて、受け入れ先現場チーム、教育チーム、採用チームといったステークホルダーの数が多くなり、担当者同士の対話を中心に制度を運用することの難しさを感じるようになりました。

そして、様々なことが明文化されるようになりました。

ポテンシャル枠の卒業要件とは?

ポテンシャル枠立ち上げ当時から、卒業に必要なスキルは「技術力」「仕事力」「学習力」の3つであり、それぞれ何であるかについては、立ち上げメンバーの間ではなんとなく共通認識を持っているような状態でした。

しかし、あくまで共通認識であり、文書化までされていませんでした。

関わる人が増えるにつれて、一人ひとりと対話できる時間が減り、対話に頼った意識合わせを行うことが難しくなったため、ポテンシャル枠の卒業要件(つまり、ポテンシャル枠本人と教育チームの共通ゴール)から言語化していくことにしました。

まだまだ発展途上ではありますが、卒業要件を明文化したことによって

  • ポテンシャル枠本人と、スキルとレベル感の目線合わせができること
  • 受け入れプロジェクトと、ポテンシャル枠メンバーのレベル感の目線合わせができること
  • 教育チームのメンバーの間で、何の成長支援を実施するのか目線合わせができること

などに役立っているのではないかと考えています。

卒業要件の言語化については、下記のyoshitsuguさんの記事でも書かれているので読んでみてくださいね。

私達がやりたい「教育」って何だろう?

「教育」というワードをここまでも多用してきたんですが、実際に取り組んできたなかで

「そもそも教育って何なんだっけ?」

ということも考える機会が多かったです。

ちなみに wikipedia で調べるとこう書いてありました。

語源・語義からの定義の例を挙げると、「英語: education」や「フランス語: éducation」は、ラテン語: ducere(連れ出す・外に導き出す)という語に由来することから、「教育とは、人の持つ諸能力を引き出すこと」とする

「人の持つ能力を引き出すこと」という定義は僕としてはしっくりきますね。

ですが、「教育」というと「先生が授業をして生徒がそれを聴く」という具体行動が想起させることが多く、自分達がやりたい・やっている教育と、周囲からの教育チームに抱くイメージにギャップが生まれることがありました。

私達の取り組みの内容は、ポテンシャル枠卒業に期待するレベルを示したり、現状の到達度合いを示したり、スキル実践の場を提供したり、フィードバックしたりといったことで、授業を行うことはありません。

あくまで目標設定と達成支援をしているだけで、スキルアップのために勉強するのはポテンシャル枠のメンバー自身です。

ステークホルダーが増えたことによって、「教育」についての認識ズレによるミスコミュニケーションはありましたが、自分たちがやっている取り組みを再定義する良い機会になったと思います。

「ナレッジマネジメント」は1年間でどう変化したか

続いて、ナレッジマネジメントについて振り返ってみましょう。

ナレッジマネジメントについて再び wikipedia で調べてみると、以下のように書かれています。

ナレッジマネジメント(英語: knowledge management)とは、企業が保持している情報・知識と、個人が持っているノウハウや経験などの知的資産を共有して、創造的な仕事につなげることを目指す経営管理手法。

とのこと。なるほどなるほど。

「企業が保持している状態」って何だろう?

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改めて定義を読み返してみると、「企業が保持している状態って何?」ってところがポイントだと感じています。

私は企業が保持している状態とは、

「情報の作成・活用・更新・削除のプロセスが定義されている状態」

だと考えています。

企業にドキュメンテーションツールを導入して、書きたい人が自由に書いていくようなスタイルだと、「企業が保持している情報」とは言い難いのかなと思います。

とはいえ、書きたい人が自由に書いていくスタイルを否定するわけではなく、自由に書いてもらう面と、秩序のある面の両方が必要で、「組織が保持している情報」とするためには後者も必要なのではないかということです。

また、秩序を持たせすぎると書くハードルが高くなって誰も書かなくなってしまうので、基本は自由に書いてもらうという前提のもと、重要なものに限定して秩序をもって情報を管理していくのが良いのではないかと考えています。

具体的な取組としては、

戦略を示したモデルであったり、

みんなの共通言語としたい概念だったり、

役割の責任を果たすためにキーとなるアクティビティだったりを、

重要な情報であると位置づけて、それらを組織の「ポリシー」や、各役割の「責任定義」(Job Description)をアップデートするようにしています。

また、それらを新たに制定したり改変する時はガバナンスミーティングと呼ばれる会議を開催し、関係する人が内容を理解し、意見を出し合った上で決定するようなプロセスにしています。

ポテンシャル枠のナレッジマネジメントへの効果は?

さて、本題に戻ってポテンシャル枠を始めたことによってナレッジマネジメントがどう変化したかですが、「個人が持っているノウハウや経験などの知的資産の共有」は活性化する動きがありましたが、「企業が保持している情報・知識を活用して創造的な仕事に繋げる」ところに関してはスタートしたばかりといったところでしょうか。

知見の共有の具体例としては、ポテンシャル枠が書いた分報に熟練のエンジニアがアドバイスをしていたり、ポテンシャル枠同士で話をするグループコーチングで、学んだことを共有し合ったり、教育についてのドキュメントが整備されたりといった行動が見られました。

このように、知識が個人間やグループ内での対話が共有され、知識がグループ内で文書化されるようにはなってきたので、グループが保持している情報を他のグループからも参照できるように、上に書いたような情報の取り扱いプロセスが必要になってくるんじゃないかなと考えました。

さいごに

この記事ではポテンシャル枠を立ち上げて「教育」や「ナレッジマネジメント」にどのような変化があったかについてフォーカスして書きましたが、背後にいろんな人の協力があって実現できていることなので、ちょっとだけ紹介したいと思います。(書ききれない方ゴメンナサイ!)

まずは教育チーム、最初は少人数でのスタートになりましたが、徐々に協力者が増えてきて今では5人のチームになりました。ポテンシャル枠の卒業生がアップデートに協力してくれていることもとても嬉しいです。卒業要件の言語化や成長支援の仕組みがどんどん整備されていくので、これからのアップデートも楽しみにしています!

次に採用&広報チーム、採用したい人物像のすり合わせや、採用状況の連携を的確なタイミングで行ってくれるおかげで、前もって計画を調整できて助かっています!

次に受け入れチーム、どこのチームも暖かく迎え入れてくれてありがとうございます!

最後にポテンシャル枠の皆さん、最初に想定していたよりも早いスピードでスキルアップしていてびっくりしています!グループコーチングを観察していると、1週間のアップデート幅が大きくて、自分もしっかりしないとなと刺激になっています。

これからもポテンシャル枠制度は進化を続けていきますので「一緒にポテンシャル枠制度を作って行きたい!」「自分もポテンシャル枠のメンバーとして働きたい!」といった方のエントリーもお待ちしております!

以上、ポテンシャル枠の振り返りでした〜。