しくみ製作所代表の車より 今月のつぶやき「2026年度に向けて」

昨年「2025年度は連結化の一年にしたい」という話をしました。
2024年度は、自分自身が会社全体を横断して見る機会が増え、提案・企画・設計・組織運営など、色々なものがつながって見えるようになった一年でした。そのうえで2025年度は、その理解を自分の中だけに閉じず、組織全体に還元し、チームとして動けるようにしていきたいと考えていました。
実際に2025年度を振り返ると、プロジェクト数も増え、メンバーも増え、売上・利益の面でも一定の成果が出た一年だったと思います。一方で、プロジェクト数が増えたことで、当然ながら難しさも増えました。
新しいプロジェクトが増えると、計画・設計・品質管理・チーム状態の把握・クライアントとの認識合わせなど、考慮すべきことも自然と増えていきます。これまで個人の経験や勘に頼っていた部分を、会社としてどのように仕組み化していくのか。また、特定の人に集中していた負荷を、どうチーム全体の力へ変えていくのか。2025年度は、そうした「次の段階”へ進むための課題」が、これまで以上に具体的に見えてきた一年だったと感じています。
2025年度を振り返って
2025年度は、新規プロジェクトの増加、既存のお客様からの継続的な相談、新しいパートナーとの取り組みなどが重なり、会社としてはかなり忙しい一年でした。
各プロジェクトのクロージングや、既存ルートからの新規案件獲得、AI利用の浸透などは、比較的うまく進んだと思います。
特に、もともと自分たちが得意としていた「複雑で、まだ整理されきっていない課題を、関係者と一緒に構造化しながら前に進める」ような仕事については、引き続き評価いただける場面が多かったように感じます。
一方で、課題もはっきりしてきました。一番大きかったのは、プロジェクト数の増加に対して、プロジェクトの品質をどう保つかという点です。当然ながら、すべてのプロジェクトを同じ解像度で見ることは難しくなります。
- 計画は適切か
- 設計判断は妥当か
- チームに無理はないか
- クライアントと同じ地図を見られている
- 作っているものは、本当にユーザーや事業にとって価値があるのか。
こういったことを、特定の人だけが見ている状態では、会社としての再現性がありません。これらに課題をかなり強く感じた一年でもありました。
また、プロジェクトを進めることに奔走する中で、マーケティングや新規の営業ルート開拓など、腰を据えて取り組むべきことが後回しになる場面もありました。やれば効果が出そうだという感触はあるものの、まだ会社として十分に仕組み化できていない領域だと感じています。
2026年度は、プロジェクトの品質を保ちながら増やしていくこと、そして外部に向けて自分たちの価値をより明確に伝えていくことが、よりテーマになっていくと思っています。
LLMによる仕事の変化

2025年度は、LLMによる仕事の変化もあった一年でした。
特にコーディングの補助については、明らかに実用段階に入ってきたと思います。コードを書く、調べる、修正する、ドキュメントを整理する、たたき台を作るといった作業は、以前よりかなり速くなっています。
今後も、LLMによって実行部分の効率化は進んでいくはずです。ただし、LLMによって仕事の本質が全部変わったかというと、私はそうは思っていません。むしろ、実行の部分が速くなることで、その前後にある仕事の重要性が相対的に上がっていると感じています。
開発の流れをざっくり見ると、検知・認知・理解・問題設定・実行・計測・品質担保のような工程があります。このうち、LLMによって特に速くなっているのは「実行」の部分です。
- コードを書く
- 資料を作る
- 調査する
- 作業を進める
これらは、今後もどんどん効率化されていくと思います。
一方で、人間側の理解や判断がより重要になる部分はこのような感じでしょうか。
- 何を問題として捉えるの
- そもそもどこに投資すべきなのか
- どういう構造にすれば、長期的にシステムや事業が良くなるのか
- 作ったものが本当に正しいのか
そして、LLM時代の開発会社に求められる仕事は、大きく2つの方向に分かれていくのではないかと考えています。
1つ目は、深い理解です。
これは、ビジネスアーキテクトやプロダクトオーナーのように、そもそもの課題を特定し、開発投資の効果を高める仕事です。単に「要望を実装する」のではなく、事業・ユーザー・業務・組織・システムの関係を深く理解し、本当に解くべき課題を見つける。いわば、垂直に深く入っていく仕事です。
2つ目は、横断的な設計です。
これは、システム設計・コード設計・データ設計・運用設計などを横断的に見て、システムをあるべき姿に近づけていく仕事です。個別のタスクをこなすだけでなく、全体として破綻しない構造を作る。変更しやすく、検証しやすく、運用しやすい状態にする。プロダクトや事業の変化に、システムがきちんとついていけるようにする。いわば、水平に広く入っていく仕事です。
LLMによって、単純な作業の価値は相対的に下がっていくかもしれません。しかし、深く理解すること、横断して設計すること、そしてその理解をチームに広げていくことの価値は、むしろ上がっていくと思っています。
チームとして「理解する力」を育てる
では、しくみ製作所として何を強くしていくのか。
私は、チームとしての「理解の深さ」をもっと強みにしたいと考えています。
私たちの仕事は、きれいに整理された課題だけを扱うわけではありません。むしろ、現場の事情、ユーザーの事情、クライアントの組織構造、既存システムの制約、過去の経緯、予算、スケジュール、品質、運用などが複雑に絡み合った状態から始まることが多いです。

そういった複雑な状況に対して、関係者と一緒に少しずつ構造を見つけ、進め方を作り、実際に動くものにしていく。
これは、昔から自分たちが比較的得意としてきたことだと思います。
ただし、これまではその力が、個人の経験や勘に依存している部分も多くありました。
- 特定の人が見れば分かる
- 特定の人が入れば進む
- 特定の人が調整すれば何とかなる
これは強みである一方で、組織としては弱さでもあります。
2026年度は、この「理解する力」を、個人技のままにせず、チームとして再現できる形にしていきたいと考えています。理解とは、単に情報を知っていることではありません。
対象を要素に分解し、それぞれの関係を捉え、どう動いているのかを見て、必要であれば定量的に検算し、その理解が正しいかを検証していくことだと思います。
- ユーザー構造
- 業務プロセス
- システム構造
- データ構造
- チーム構造
これらをバラバラに見るのではなく、つながったものとして理解し、どこに手を入れると良くなるのかを考える必要があります。
LLMによって実行が速くなるからこそ、この理解の質が、プロジェクトの成果をより大きく左右するようになるはずです。
2026年度に取り組むこと
2026年度は、大きく4つのことに取り組みたいと考えています。
1. プロジェクト品質を保つ仕組みづくり
まず、プロジェクト数が増えても品質を保てる仕組みを作っていきます。プロジェクトが増える中で、すべてを特定の人だけが深く把握し続けるのは、現実的ではありません。
だからこそ、計画・設計・検証・チーム状態といった複数の観点を、特定個人の判断に頼ることなく、チーム全体で横断的に見ていける仕組みを整えていきたいと考えています。

これは、上からチェックするための仕組みではありません。各プロジェクトの理解を深め、必要な知見を流し込み、プロジェクトがより良い状態で進むようにするための仕組みです。
プロジェクトの中に閉じていると、どうしても視野が狭くなります。外から見たときに、計画がズレていないか、検証の手札が足りているか、チームの構造に無理がないか、設計判断が適切か、といったことを確認できる状態を作りたいと思っています。
2. 会議のアップデート
次に、会議をアップデートします。
会議は、単なる情報共有の場ではなく、理解を深め、判断する場であるべきだと考えています。
たとえば、日々のミーティングも、「昨日やったこと」「今日やること」を話すだけでは、チームの理解はあまり深まりません。できるだけ現物を見て、何が起きているのか、作戦を継続するのか、切り替えるのかを判断する場にしていきたいです。
また、ふりかえりについても、単に良かったこと・悪かったことを出すだけではなく、「本当の問題は何だったのか」を深く掘る場にしたいと考えています。プロダクトレビュー、計画会、設計レビューも含めて、会議を「報告の場」から「理解と判断の場」へ寄せていく。これは地味ですが、チームとしての力を上げるうえでかなり重要な取り組みだと思っています。
3. 設計と検証の強化
3つ目は、設計と検証の強化です。
LLMによって実装速度が上がるほど、設計と検証の重要性は上がります。速く作れるからこそ、間違ったものを速く作ってしまうリスクもあります。
そのため、重要な設計判断をチームで共有し、後から見返せるようにすること。設計レビューを通じて、システム全体としての整合性を確認すること。実装後も、ログ・データ・コード・環境などを使って、事実に基づいて検証できること。
こういった力を、会社として強くしていきたいです。なんとなく正しそうではなく、実際にどう動いているのかを確認しながら進める。
この「検証できる環境」をチームに組み込むことで、手戻りを減らし、品質を高めていきたいです。
4. 技術更新とマーケティング
4つ目は、技術更新とマーケティングです。
技術面では、LLMの活用は引き続き進めます。あわせて、バックエンド技術やデータ基盤、API設計、マイクロサービス化なども、必要に応じて試していきたいと考えています。大きな方針としては、自由で安全な入出力インターフェースを作り、AI・UI・別システムから活用しやすい構造にしていくことが重要だと思っています。

一方で、マーケティングについても、2026年度はもう少しきちんと取り組みたいです。
2025年度にも小さな実験は行ってきましたが、まだ会社として継続的に回せている状態ではありません。
開発会社としての強み、自社サービス、これまで蓄積してきた知見を整理し、外に伝えていく必要があります。マーケティングは、単なる宣伝ではなく、市場にある課題を捉え、自分たちがどの課題に向き合う会社なのかを明確にする活動だと考えています。
2026年度は、自分たちの価値をもう一段言語化し、必要としてくれる人に届くようにしていきたいです。
さいごに
LLMの進化によって、開発のあり方はこれからも変わっていくと思います。
「エンジニアの仕事がなくなる」といった話もありますが、私はそこまで単純な話ではないと思っています。もちろん、言われたことをそのままコードにするだけの仕事は減っていくかもしれません。しかし、そもそもの課題を理解し、関係者の認識を揃え、システム全体としてあるべき構造を考え、現場で使われる形に落とし込み、品質を担保する仕事は今後も必要とされ続けると思います。
むしろ、LLMによって実行のリソース制約が減ることで、これまで手が届かなかった設計や改善に取り組みやすくなる可能性があります。2026年度は、LLMによって速く作る会社になるだけではなく、より深く理解し、より良く設計し、より確かなものを作る会社になっていきたいと思います。
深い理解によって、本当に解くべき課題を見つける。
横断的な設計によって、システムをあるべき姿に近づける。
その両方をチームの中で巡回させ、プロジェクトの投資対効果を高め、ユーザーやクライアントにとって本当に価値のあるものを作っていく。技術や環境は大きく変わりますが、本質的に重要なことは、あまり変わらないのではないかと思っています。
2026年度も、しくみ製作所は「理解して、作る」ことに向き合い続けたいと思います。