ウォーターフォール開発は時代遅れ?日本だけって本当なの?

日本の開発現場でよく言われている、「ウォーターフォールは時代遅れ」とは本当なのでしょうか。
本記事ではウォータフォール開発の現状と今後について、また、ウォーターフォールに代わる開発手法について解説・紹介します。加えて、国外の開発事情についても触れますので、日本との開発事情の比較もしてみましょう。
開発手法のトレンドを知ることで、どのような開発手法を選ぶべきか選択することができるようになります。開発したいプロダクトに対して適切な開発手法を選べるように学習しましょう。
ウォーターフォール開発は時代遅れ?
結論から言えば、用途次第ではウォーターフォールは今でもちゃんと有力な選択肢の一つです。
しかしながら、変化の激しい領域にはあっていないため、現代の環境においてはアジャイル系の開発手法が主流になっています。
そのため、時代遅れというよりは適材適所と考えるほうが近しいでしょう。
公共・銀行システムなどはまだまだウォーターフォールが主流ですし、ドキュメンテーションと検証が厳格に行われています。
一方で、競争力が必要な一般的なマネジメントシステムとかプロダクト開発は、アジャイル開発などの仮説検証をぐるぐると高速で回していける手法が強いです。
要するにどんな手法も使い用で、近年はそれらをハイブリッドで運用する手法も確立されつつあります。
ソフトウェア開発は非常に複雑な業務ですので、現場レベルでは一つの手法に拘らずにフェーズやタスクレベルで切り替えられるのが理想といえます。
ただし、もし開発を外部に発注することを考えた場合、契約・調達内容と手法が密接に結びつくため、まずは作りたいものと手法の組み合わせを考え、相性の良い手法を選ぶところから始めてみましょう。
運用に慣れてきたら別の開発手法で取り入れられそうなところを探してみるのがオススメです。
ウォーターフォール開発は日本だけ?
ウォーターフォールが多いのは日本だけではありませんが、日本はその比率が相対的に高いといえます。
日本でも公的機関がアジャイルの実践ガイドやモデル契約を整備し、移行を後押ししていますが、IPAの最新の調査では『開発手法は依然ウォーターフォールが主流。アジャイル等は約4割が一部導入』と記載がある通り、ちょうど混在期といえます。
契約・調達の構造や慣習が変わらない限り、リスクを重く見てウォーターフォール以外を導入するのがなかなか難しいと考える企業が多いのが実情ですが、徐々に別種の開発手法も浸透してきています。
つまり『日本だけがウォーターフォール』という極端な図式は誤りで、国内でもアジャイル開発等が取り入れられているというのが正しい意見となります。
それでは逆に諸外国のウォーターフォール事情はどうなっているでしょうか。
ウォーターフォール開発の諸外国の状況
海外においても、『全部アジャイル』でも『全部ウォーターフォール』でもありません。
例えば、米英政府は調達・ガバナンスの指針を整備し、アジャイル開発を推奨しています。
一方、民間ではハイブリッド運用が一般化され、規制の厳しい領域ではトレーサビリティを強化するためにウォーターフォールを導入しています。
あるいは、IT化を進めるインドの大手ITサービスはエンタープライズ規模のアジャイル/DevOpsを標榜し、世界の顧客要件に合わせて手法を使い分けています。
要するに、各国とも公共・安全系は厳格、プロダクト系は俊敏、というコンテクスト基準の選択が定着しているといえます。
結果として、開発の方法論の勝ち負けよりも、成果をできるだけ早く検証できる構造へ、制度そのものを適応させる動きが加速しています。
アメリカの場合
連邦政府はアジャイル前提へ舵を切り、契約や監督もそれに合わせて更新されています。
- TechFAR(米国デジタルサービスの専門家チーム)によるアジャイル適合調達
- GAO(政府説明責任局)ガイドによる監督・評価枠組み
- 航空システム等の規制産業での文書化・トレーサビリティ重視
総じて『俊敏さ×ガバナンス』の両立を制度面から支えるのが特徴です。
ヨーロッパの場合
公的デジタルサービスはアジャイルを標準とし、評価・保証の手続もそれに適合されています。
各国は規制・監査要求を満たすため、アジャイルの成果物に合わせた指針を打ち出しています。
- 英国のGDSサービスマニュアルの段階提供
- Agile Deliveryアシュアランスのガバナンス指針
- EU PM²-Agileの標準化と拡張
- 官民連携のハイブリッド定着
結果として各国でハイブリッドの官民連携が進んでいます。
規制産業ではドキュメントの厳格化と継続的デリバリーを両立させる工夫をしています。
インドの場合
グローバル案件を担う大手ITサービスを中心に、エンタープライズ規模のアジャイル/DevOpsが広く実装されています。
- 大手SIによるエンタープライズ・アジャイル/DevOps展開
- スタートアップの高速反復志向
- 固定仕様案件での段階ゲート併用
- 顧客文脈に応じたハイブリッド一般化
市場全体としてはアジャイルとDevOpsの組み合わせが主流化しつつあります。
実務ではSAFeなどのスケール手法と品質管理を組み合わせる傾向になっています。

•国・地域別トレンド手法(概念図。相対スコア0–5。根拠は各政府ガイド/IPA 2024/SI各社公開資料)。
本図は政策ガイド・公的資料・業界公開情報をもとにした概念的な傾向図
参照元:IPA 2024、USDS TechFAR、GAO Agile Assessment Guide、DoDI 5000.87、UK GDS、PM²-Agile、TCS/Infosys公開資料。
「ウォーターフォール開発は時代遅れ」と言われる理由5選
ウォーターフォール開発は、特に日本において主流なソフトウェア開発手法として長く採用されてきました。
近年、数多くのプロダクトが市場に合わせてリリース・改善されるようになり、ビジネスだけでなく開発手法にも柔軟性や速度を求められるシーンが増えてきています。
そんな中でウォーターフォール開発に強くこだわってしまうと、サービスとして致命的なリスクを持ちかねません。
ここでは、なぜウォーターフォールが時代遅れと言われているのか、代表的な5つの理由を紹介します。
1. 変化への対応が遅く、再作業コストが跳ね上がる
プロダクト開発において、変化対応の遅さは致命傷になりえます。
主な発生事象
- 要件凍結による末期露見
- 統合集中による品質崩れ
- 非機能遅延による対策高額化
2. 価値検証が遅れ、投資効率が下がる
価値検証の遅延により、投資効率が下がってしまいます。
主な発生事象
- MVP欠如による学習不足
- 機能偏重による機会損失
- 価値指標不在による判断遅延
3. リスクが後倒しになり品質問題が末期に集中
リスクの後倒しと品質の山崩れが構造的に発生しやすいです。
主な発生事象
- 一括統合による相互作用不具合
- 性能・セキュリティ実測の遅延
- 受け入れ段階の大規模手戻り
4. 初期見積の誤差が大きく、計画遵守が目的化しがち
見積・計画の誤差が開発初期に最大になるため、計画の遵守に意識がフォーカスされてしまいます。
主な発生事象
- 不確実性コーン無視の詳細固定
- 変更コスト高止まりによる硬直
- 予算・契約のスコープ固定化
5. 調達・契約・組織の硬直性が学習を阻害
調達・契約・組織などの構造的な課題により、別の手法を検討されない傾向にあります。
主な発生事象
- 一括請負前提の合意形成負荷
- 職能サイロによる情報滞留
- 工程完了率偏重のKPI不整合
ウォーターフォール開発以外におすすめの方法
ウォーターフォール開発の持つ問題点について触れましたが、それでは他にどのような開発手法があり、それらはどのような特徴を持っているのか簡潔にまとめます。
それぞれ、プロダクトを取り巻く環境要因などで適切な採用シーンは異なりますし、もちろんウォーターフォールが適切なシーンもあります。
自分たちのビジネス・サービスにおいて、何が重要なのか考え、最適な開発手法を選択しましょう。
アジャイル型開発
不確実性が高いなら第一候補になります。
短い反復で価値仮説を検証し、優先度を継続的に更新することができます。
初期に最重要リスクへ着手し、学びを次イテレーションに繋げましょう。
プロトタイピング型開発
UXや未知の技術要素が多い場合に有効な手法です。
低〜中忠実度のプロトタイプで顧客と早期に合意形成し、要件の曖昧さを減らします。
経営判断の前倒しにも効くため、上流での投資判断を素早く下せるのがポイントです。
ハイブリッド(アジャイル×段階ゲート)
現実的な落とし所になります。
上流はアジャイルで仮説検証とバックログ整備、中流以降は段階ゲートでリスクの高い変更を管理するなど、目的別に手法を使い分ける手法です。
こうした二刀流は多国で主流化しており、方式論の宗教戦争を避けつつ結果に集中できます。
組織の成熟度に合わせ、段階的に重さと俊敏さの配分を調整する発想が要です。
| 手法 | 向く状況 | 強み | 注意点 | 実践のコツ(キーポイント) | 契約/調達の相性 |
|---|---|---|---|---|---|
| アジャイル(スクラム/カンバン) | ・不確実性が高い ・ユーザー検証を早回ししたい | ・短サイクルでの価値検証 ・優先度の継続更新 ・変更に強い | ・ガバナンス未整備だと混乱 ・成果指標が曖昧だと形骸化 ・意思決定が遅い組織と相性× | ・スプリント/カンバンのWIP制限 ・CI/CD+自動テスト常設 ・価値/KPIでのレビュー | 可変スコープ・モジュラー発注が◎ |
| プロトタイピング(デザインスプリント等) | ・UX不確実 ・合意形成が難しい ・技術的未知あり | ・早期に合意形成 ・仕様の曖昧さを圧縮 ・非機能の難所を前倒しで可視化 | ・作り捨ての線引きが曖昧だと浪費 ・品質保証が薄くなりがち ・過度な『試作依存』に注意 | ・捨てる/昇華の方針を明文化 ・検証指標を事前合意 ・学びを即バックログ反映 | 事前検証枠・PoC契約が◎ |
| ハイブリッド(アジャイル×段階ゲート) | ・監査/規制が強いが学習速度も必要 ・大規模刷新 | ・トレーサビリティと俊敏さの両立 ・リスクを段階で封じ込め ・現実的で再現性高 | ・運用設計が複雑 ・ゲートが過剰だと減速 ・役割/責任の曖昧化に注意 | ・ゲートは『価値・品質・フロー』で審査 ・小粒度リリース+計測 ・変更閾値を数値化 | 成果物単位・段階契約が◎ |
| インクリメンタル(段階的リリース) | ・既存改善・機能追加・段階移行 | ・早期価値提供 ・移行リスク分散 ・学習の積み上げ | ・全体設計が弱いと負債化 ・優先度衝突で断片化 ・技術基盤の未整備で詰まり | ・ロードマップを『価値スライス』で分解 ・フェーズごとに完結KPI設定 ・継続的リリース習慣化 | 成果分割・出来高評価が◎ |
| ウォーターフォール/Vモデル | 要件が安定。法令/安全規格の追跡が必須。 | ・文書化と検証プロセスの明確さ ・大規模移行の計画性 ・監査適合のしやすさ | ・変更に弱い ・価値検証が後ろ倒し ・末期の手戻り高コスト | ・早期スパイク/プロトを前置 ・ゲートで実測データ審査 ・非機能を先行検証 | 固定価格・成果明細契約が◎(変更条項の設計必須) |
アダプティブアジャイル開発(Adaptive Agile Development)
弊社では独自の開発モデルである、アダプティブアジャイル開発を採用しています。
大きくは上述のハイブリッド開発に似た開発手法ですが、ウォータフォールとアジャイルのハイブリッド、それぞれの手法の良いところを吸収した手法を目指しています。
アダプティブという言葉の名の通り、シーンに応じて開発手法を切り替えていく、というのがその大きな特徴になります。
例えば、大規模な機関システムの開発シーンでは上述のハイブリット開発と逆に、ウォーターフォール開発のV字モデルでいうところの上流工程、つまり要件定義や基本設計のようないわゆる計画にあたる部分はウォーターフォール的に行い、詳細設計・実装等の実行部分はアジャイル的に開発する、というように工程ごとに適切な手法を選択する構造を取ります。
この手法自体を選択的にする、というのがポイントで、別の例を挙げるとSaaSのような変化の激しい領域では、そのほとんどをアジャイル的に開発するものの、全く計画がないとマーケティングができなかったりビジネス側が破綻してしまうため、必要最低限のマイルストーンは切ってウォーターフォール的に計画線を引いておく、というように型にハマりすぎないようにしています。
こうすることによって、多くのシーンで最適に近い開発モデルを適用できるのが従来の開発手法と一線を画す強みとなっています。
アダプティブアジャイル開発を実現するための具体的なアプローチはここでは割愛しますが、詳しい話を聞きたい方は下記ページからお問い合わせください。
適切な開発手法を選ぼう
ウォーターフォール開発は今でも現役ですが、利用されるシーンは限定的になってきています。
従来のやり方にこだわらず、他の開発手法を知ることによって適切な開発手法を選べるようになりましょう。
重要なのは、ビジネス・サービスが成功する上でどのような開発手法を選ぶべきか、ということです。
アジャイル開発一つ取っても、スクラム開発などのさまざまなフレームワークがありますので、一度調べてみることをお勧めします。
また、もし初めてアジャイル開発に取り組む場合は、PoC(Proof of Concept: 概念実証の略。アイディアの実現性を測るための検証作業。)などの比較的小さなプロジェクトから始めてみることを推奨しています。
(そもそもアジャイル開発が小規模なプロジェクトに最適であり、かつ初挑戦のリスクを低減することができるためです。)
新しい開発手法を学び・実践することで、より良い成果をあげられるようになりましょう。